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芸術は、世界の欠落を映すもの
先日、滋賀県にある佐川美術館を訪れ、
画家・千住博さんの作品を
ゆっくりと鑑賞する機会がありました。
館内に一歩足を踏み入れると、
静寂そのものが作品の一部になっているような、
不思議な時間が流れていました。
千住さんといえば、
世界的にも高く評価される日本画家。
無数の水が流れ落ちる「滝」の作品は
あまりにも有名です。

岩肌も、水しぶきも、
音さえ描かれていないのに、
目の前に立つと、
本当に滝の音が聞こえてくるような
感覚になります。
実は、羽田空港にも
千住さんの代表作の一つが展示されており、
旅立つ人や帰ってくる人を
静かに見守り続けています。
その日、美術館で最も心に残ったのは、
千住さんご本人がお話してくれた
一つの言葉でした。
「芸術とは、
世の中の欠落していることを指摘し、
美によってそれを補完すること。」
あまりにも美しい考え方で、
思わずその場でメモを取りました。

私たちは日々、
便利さや効率を求めながら暮らしています。
けれど、その一方で、
静けさや余白、誰かを思いやる心、
美しい景色に立ち止まる時間を、
少しずつ失っているのかもしれません。
だからこそ芸術は、
足りないものを教えてくれる。
そして美しさという形で、
私たちの心を静かに満たしてくれる。
この言葉に触れたあと、
どうしても形に残したくなり、
私はこのメッセージを英訳して、
MUIのトートバッグのデザインにしました。
**ART REVEALS
WHAT THE WORLD
IS MISSING.
BEAUTY
MAKES IT WHOLE.**
これは単なるグラフィックではありません。
MUIが大切にしたい価値観そのものです。
MUIは、古くからある「無為」
という美意識を原点にしています。
必要以上につくらないこと。
必要以上に語らないこと。
余白を残すこと。
自然に委ねること。
本当に美しいものは、
いつも静かで、
決して自分を主張しすぎません。
服も同じだと思っています。
誰かより目立つためではなく、
着る人の人生や感性を、
そっと引き立てる存在でありたい。
そんなものづくりを
続けていきたいと思っています。
あの日、美術館で出会った一つの言葉は、
MUIというブランドが目指したい未来を、
改めて教えてくれました。
これからも旅をして、
自然に触れ、
芸術に触れ、
世界に足りない「何か」を探しながら、
美しさというかたちで、
少しずつ届けていけたらと思っています。